桜子は、斉藤が自分のことを好きだと笛子から聞いて、びっくりすると同時にうれしくなる。二人が両思いであることを知った周りの家族は、桜子に結婚を勧める。しかし、桜子は音楽学校へ進学して勉強する夢があり、結婚にはなかなか踏み切れない。そんな折、斉藤が桜子に、音楽学校に合格したら東京の自分の実家から音楽学校へ通えばいいと申し出て、二人は婚約をしてはどうかという話になる。
ところがある日、電報を受け取った斉藤が、急きょ東京へ帰省。ようやく岡崎へ戻って来たかと思うと、いきなり桜子との婚約を白紙に戻したいと言い出す。何がなんだか全く理解できない桜子。斉藤は教師を辞して、海軍燃料廠へ転職するというのだ。しかし、斉藤が有森家を去る日、実は斉藤の実家が倒産をして借金を背負ったことを知る。
しかし、斉藤は未練を断ち切り、桜子のもとから去っていく。一方、八丁味噌の蔵元「山長」では、跡取り息子の達彦が名古屋の八高を退学し、東京の音楽学校を受験したいと言い出し、かねから勘当される。桜子は、ライバルだが自分よりピアノが上手い達彦の心情を汲みとって、達彦のささやかなピアノコンサートを実現させようとする。ところが当日かねに達彦の身柄を拘束されてしまい・・・。