桜子は、かねが死ぬ前に1度ドレスを着てみたいというのを聞き、磯と共に実現させるなどして看病を続ける。昭和19 年9月、東京帝大の学生である勇太郎が海軍に入ることになり、入営の準備で岡崎に戻るが、ドイツ語で書かれた物理の愛読書を軍に持ち込めないのを残念がる。
桜子はそんな勇太郎のために、徹夜でドイツ語の本をノートに筆写し、勇太郎に渡す。桜子の愛情を実感した勇太郎は、命を国に捧げるという考えを改め、生きて帰って来ると言って離れて行く。
昭和20年2月。かねはとうとう危篤状態に陥り、店の舵取りは桜子に任せるという遺言をして息を引き取ってしまう。かね亡き後、桜子は女将として店を仕切ろうとするが、タネがそれを横取りする。いきなり従業員の解雇を宣言するタネに桜子は対抗するが、後継者争いで立ち行かない山長に、県から配給差し止めもありうるとの連絡が入る。山長の先行きを真剣に考えた桜子は、ある大きな決断をする。